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重要文化財の「品格」を、デジタルの手触りに。大阪市中央公会堂リニューアルに見る、セオリーを超えたディレクションの執念

ウェブサイトは「背中を押す」ための装置である

私たちメイクイットプロジェクトが、クライアントからウェブ制作の相談を受ける際に、常に立ち返る原点があります。 それは、「ウェブサイトは、単なる情報の陳列棚ではなく、最後の一歩を確信に変えるための装置である」ということです。
ウェブサイトは、一方通行のメディアです。一度画面を閉じられてしまえば、誤解を解く術はありません。だからこそ、訪れた瞬間に「ここは本物だ」と直感させ、ユーザーが宿泊や利用を迷っているなら、その背中をそっと、しかし力強く押す。その「納得感」こそがデザインの役割だと信じています。
今回、私たちがディレクションとデザインを担当した「大阪市中央公会堂」のウェブサイトリニューアルは、まさにその信念が試されるプロジェクトでした。100年以上の歴史を背負う重要文化財。その重みを、数インチのスマホ画面の中にどう閉じ込めるか。そこには、セオリーを度外視した「執念」がありました。

「セオリー」よりも優先すべき「本物の再現」

今回のリニューアルにおける最大の課題は、古くなったサイトの現代化、特にレスポンシブデザイン(スマホ対応)への移行でした。
通常、現代のウェブ制作における鉄則は「軽量化」と「表示スピード」です。画像を圧縮し、データを軽くする。それがSEOやユーザー利便性における「正解」とされています。しかし、中央公会堂という荘厳な建築物を前にしたとき、私はそのセオリーをあえて横に置く決断をしました。
「この荘厳な美しさを伝えるには、妥協した画像サイズでは絶対に不可能だ」
美しいステンドグラス、重厚な木造の意匠、天を突くような天井高。これらを「見やすいサイズ」に収めてしまうのは、歴史に対する冒涜に等しい。あえてデータの重さを恐れず、写真を大きく、大胆に配置する。ユーザーが画面をスクロールする速度を、実際の廊下を歩く速度に同調させるように、スライダーの動きも「ゆっくり」と調整しました。セオリーよりも、「そこにある空気感」を優先したのです。

執念のビジュアル制作:ヘリポートに立った理由

このプロジェクトのクオリティを決定づけたのは、ビジュアルへの徹底したこだわりです。撮影は、絶大な信頼を置くカメラマンの竹内氏(シャープフォーカス)に依頼しました。
しかし、現場は困難の連続でした。重要文化財である公会堂の撮影が許されるのは、月にたった一度の「休館日」のみ。大広間、中集会室、小部屋、地下の隅々に至るまで、そのすべてを数時間で撮りきらなければなりません。
さらに、公会堂の「全景」を捉えるためのポイント探しは、もはやウェブ制作の枠を超えた活動となりました。街の中に溶け込みながらも、圧倒的な存在感を放つその姿を撮影するため、私たちは近隣ビルの屋上にある「ヘリポート」への立ち入り許可を得ました。

[Image Note: 近隣ビルのヘリポートから撮影された、街に佇む公会堂の全景写真]
足がすくむような高所。風が吹き抜けるヘリポート。そこから見下ろした公会堂は、地上で見るのとはまた違う、守るべき「街の誇り」としての顔をしていました。この写真はトップページではなく、あえて物語の奥行きを作る重要なピースとしてサイト内に配置しています。「ここぞ」という場面でこの一枚が視界に入ることで、サイト全体に圧倒的な説得力が宿ったのです。

意匠を「テクスチャ」としてコードに刻む

写真で「動」の魅力を伝える一方で、デザインの細部には「静」のこだわりを凝縮させました。 公会堂の細かな装飾や建築美をアイコン化し、さらにそれを繊細な「線画(イラスト)」として再構築しました。
特筆すべきは、その線画を全ページの背景に敷き詰めたことです。 これは、情報の読みやすさを優先する現代のフラットデザインとは逆行する手法かもしれません。しかし、薄く背景に存在するそのラインがあることで、ユーザーはどのページを開いていても、「今、自分は中央公会堂の歴史の中にいる」という手触りを無意識に感じ続けることができます。
イラストと写真、そしてデジタルなUI。これらが三位一体となることで、中央公会堂というブランドが「アイコニックな体験」へと昇華されたのです。


「お任せ」という信頼に応えるということ

今回のプロジェクトでは、運営を担う私たちのクライアント様をはじめとするチームとの連携、そしてエンドクライアント様からの「お任せします」という深い信頼がありました。
「業種に特化しない」という私のスタンスは、時に「何でも屋」に見えるかもしれません。しかし、私が特化したいのは業種ではなく、クライアントが持つ「価値の深掘り」です。歴史ある建造物のリブランディングであれ、創業間もない個人事業のサイトであれ、そこに「守るべき想い」があるならば、私たちは全力を尽くしてその背中を押すメディアを作り上げます。
泥臭い現場の撮影から、ミリ単位の背景デザインまで。 メイクイットプロジェクトは、これからも「セオリーの先」にある感動を形にし続けます。


このブログで紹介したホームページの制作事例は下記からご覧いただけます。

大阪市中央公会堂ウェブサイトの制作事例紹介

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